どこまで問えるソフト開発者の責任 ウィニー逮捕の波紋 [朝日新聞]
2004年5月10日 時事ニュース
05月10日付 朝日新聞の報道「どこまで問えるソフト開発者の責任 ウィニー逮捕の波紋」へのコメント:22:33
どこまで問えるソフト開発者の責任 ウィニー逮捕の波紋
インターネット上で音楽や映像などの情報を直接やりとりできる。そんなファイル交換ソフトを「開発」しただけで、法的責任を問えるのか。京都府警が10日、「Winny(ウィニー)」の開発者を著作権法違反の幇助(ほうじょ)容疑で逮捕したことが、波紋を広げている。便利なプログラムとして利用者が増え、違法コピーの温床ともされてきた。だが、米国ではソフト開発者ではなく、利用者の責任を問うのが主流になりつつある。
「切れ味のいい包丁を作ったからといって、包丁が悪用された場合、包丁を作った人まで悪いというのはおかしい」。多数のネットワークシステムを開発してきた40代のプログラマーは、今回の逮捕をこう憤る。「電子ネットワークを経由して生じた問題は、末端の利用者同士の自己責任で解決すべきだ」
竹内郁雄・電気通信大教授(計算機科学)は、「幇助という理由でソフト開発者が逮捕されると、ほかのプログラマーまで不安を感じ、萎縮(いしゅく)するのでは」と今後への影響を心配する。
竹内教授は「天才プログラマー発掘」を目指した国の事業にかかわり、00年、01年度に金子勇容疑者(33)が参加したテーマを採択した。「プログラミングの腕前は一頭地を抜いていた」。だが、ウィニーの制作者とは知らなかったという。
ウィニーを使っている人が、ある情報を自分のパソコンに保存すれば、他の利用者もこの情報を取り込めるようになる。著作権者に無断の場合は著作権侵害だ。問題は、こうした情報交換が可能なプログラムをつくったことが、著作権法違反の「幇助」にあたるかどうかだ。
京都府警は金子容疑者がウィニーによる著作権侵害が広がっていることを知りながら、236回のバージョンアップを繰り返したことなどを踏まえ、「ウィニーが違法に利用されることを認識していた」と判断し、逮捕の根拠とした。
だが、デジタル著作権問題に詳しい弁護士は、「ウィニー開発を裁くのではなく、音楽CDやゲームソフトのメーカーがソフトをコピーされないような技術を導入し、対応すべき問題だろう」と摘発に首をかしげる。
一方、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会は「ソフトの開発者が、悪用されることを予見した上で開発・配布した場合は、一定の責任が生じると考える」との趣旨の声明を出し、開発者側の責任を指摘した。
○匿名性高く悪用も
インターネットを介して不特定多数の人が映像ファイルなどを交換できるソフトは、米ナップスター社による音楽ファイルの交換サービスで大きな注目を集めた。
同社のコンピューター(サーバー)は、利用者がそれぞれ持っている曲をリストにして管理。リスト中に欲しい曲を見つけた他の利用者が求めると、曲の所有者のコンピューターから曲のデータ(ファイル)を受け取れる。
一方ウィニーでは管理サーバーがなく、ファイル検索は利用者間で直接行うため、曲などの提供者や取得者の匿名性が高まり、違法コピーのソフトの交換やウイルスの流布といった悪用も目立つようになった。
ネット起業家として知られる伊藤穣一さんは「コンピューターを利用して曲や映像をつくるアマチュア制作者が増えている。作品をできるだけ多くの人に見せたい側からすれば、こうした技術は有効。技術は良いことにも悪いことにも使える」と言う。
摘発後の10日夜もインターネット上には、ウィニーを入手できるホームページが多数あった。データ量の小さなプログラムなので、瞬時に自分のパソコンに取り込める。
起動した画面で、テレビドラマのタイトルなどを指定してやると、いろんな人が持っている該当のドラマのファイル名の一覧が表示され、選択すればコピーできる。
そのたび検索しなくても、キーワードを指定して自動的にコピーされるようにも設定できるので、留守中や夜間でも欲しいものが手に入る。見逃したドラマ、新しい曲やゲーム、映画などの取得が多いという。
○米では個人を大量提訴
米国でも、人気曲などが無料でファイル交換されていることが音楽CDの売り上げ減につながっているとの声は音楽業界にある。00年に9億4200万枚だったアルバムの出荷は、03年には7億4500万枚。業界団体の全米レコード協会(RIAA)は、「その影響で数千人が解雇されている」としている。対応策としてRIAAは、ファイルを交換している個人を、著作権違反で民事提訴することに重点を置いている。
米国でも、以前はファイル交換ソフトを開発した会社を訴えることは多かった。代表的なのは、米ナップスターに対し、CD販売への打撃に危機感を募らせた音楽業界が著作権法違反だとして提訴したことだ。
裁判所が01年に、交換差し止めの判決を出し、ナップスターはサービス停止に追い込まれた。
だが03年4月、米裁判所がファイル交換ソフト会社の責任を認めず、米レコード・映画業界の訴えを退ける判断を下したことで潮目が変わった。
背景には、ナップスターが同社のサーバーの手助けによって利用者がファイルを交換できる仕組みだったのに対し、それ以降の「グヌーテラ」などの交換ソフトは、サーバーを仲介しないため、会社の責任を問うのが難しくなったことがある。
こうした流れの中でRIAAは、03年秋から、ファイルの提供を行っている個人に対する大量提訴を開始した。これまでに2400人以上の個人を提訴している。
(05/10 23:53)
http://www.asahi.com/national/update/0510/032.html
どこまで問えるソフト開発者の責任 ウィニー逮捕の波紋
インターネット上で音楽や映像などの情報を直接やりとりできる。そんなファイル交換ソフトを「開発」しただけで、法的責任を問えるのか。京都府警が10日、「Winny(ウィニー)」の開発者を著作権法違反の幇助(ほうじょ)容疑で逮捕したことが、波紋を広げている。便利なプログラムとして利用者が増え、違法コピーの温床ともされてきた。だが、米国ではソフト開発者ではなく、利用者の責任を問うのが主流になりつつある。
「切れ味のいい包丁を作ったからといって、包丁が悪用された場合、包丁を作った人まで悪いというのはおかしい」。多数のネットワークシステムを開発してきた40代のプログラマーは、今回の逮捕をこう憤る。「電子ネットワークを経由して生じた問題は、末端の利用者同士の自己責任で解決すべきだ」
竹内郁雄・電気通信大教授(計算機科学)は、「幇助という理由でソフト開発者が逮捕されると、ほかのプログラマーまで不安を感じ、萎縮(いしゅく)するのでは」と今後への影響を心配する。
竹内教授は「天才プログラマー発掘」を目指した国の事業にかかわり、00年、01年度に金子勇容疑者(33)が参加したテーマを採択した。「プログラミングの腕前は一頭地を抜いていた」。だが、ウィニーの制作者とは知らなかったという。
ウィニーを使っている人が、ある情報を自分のパソコンに保存すれば、他の利用者もこの情報を取り込めるようになる。著作権者に無断の場合は著作権侵害だ。問題は、こうした情報交換が可能なプログラムをつくったことが、著作権法違反の「幇助」にあたるかどうかだ。
京都府警は金子容疑者がウィニーによる著作権侵害が広がっていることを知りながら、236回のバージョンアップを繰り返したことなどを踏まえ、「ウィニーが違法に利用されることを認識していた」と判断し、逮捕の根拠とした。
だが、デジタル著作権問題に詳しい弁護士は、「ウィニー開発を裁くのではなく、音楽CDやゲームソフトのメーカーがソフトをコピーされないような技術を導入し、対応すべき問題だろう」と摘発に首をかしげる。
一方、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会は「ソフトの開発者が、悪用されることを予見した上で開発・配布した場合は、一定の責任が生じると考える」との趣旨の声明を出し、開発者側の責任を指摘した。
○匿名性高く悪用も
インターネットを介して不特定多数の人が映像ファイルなどを交換できるソフトは、米ナップスター社による音楽ファイルの交換サービスで大きな注目を集めた。
同社のコンピューター(サーバー)は、利用者がそれぞれ持っている曲をリストにして管理。リスト中に欲しい曲を見つけた他の利用者が求めると、曲の所有者のコンピューターから曲のデータ(ファイル)を受け取れる。
一方ウィニーでは管理サーバーがなく、ファイル検索は利用者間で直接行うため、曲などの提供者や取得者の匿名性が高まり、違法コピーのソフトの交換やウイルスの流布といった悪用も目立つようになった。
ネット起業家として知られる伊藤穣一さんは「コンピューターを利用して曲や映像をつくるアマチュア制作者が増えている。作品をできるだけ多くの人に見せたい側からすれば、こうした技術は有効。技術は良いことにも悪いことにも使える」と言う。
摘発後の10日夜もインターネット上には、ウィニーを入手できるホームページが多数あった。データ量の小さなプログラムなので、瞬時に自分のパソコンに取り込める。
起動した画面で、テレビドラマのタイトルなどを指定してやると、いろんな人が持っている該当のドラマのファイル名の一覧が表示され、選択すればコピーできる。
そのたび検索しなくても、キーワードを指定して自動的にコピーされるようにも設定できるので、留守中や夜間でも欲しいものが手に入る。見逃したドラマ、新しい曲やゲーム、映画などの取得が多いという。
○米では個人を大量提訴
米国でも、人気曲などが無料でファイル交換されていることが音楽CDの売り上げ減につながっているとの声は音楽業界にある。00年に9億4200万枚だったアルバムの出荷は、03年には7億4500万枚。業界団体の全米レコード協会(RIAA)は、「その影響で数千人が解雇されている」としている。対応策としてRIAAは、ファイルを交換している個人を、著作権違反で民事提訴することに重点を置いている。
米国でも、以前はファイル交換ソフトを開発した会社を訴えることは多かった。代表的なのは、米ナップスターに対し、CD販売への打撃に危機感を募らせた音楽業界が著作権法違反だとして提訴したことだ。
裁判所が01年に、交換差し止めの判決を出し、ナップスターはサービス停止に追い込まれた。
だが03年4月、米裁判所がファイル交換ソフト会社の責任を認めず、米レコード・映画業界の訴えを退ける判断を下したことで潮目が変わった。
背景には、ナップスターが同社のサーバーの手助けによって利用者がファイルを交換できる仕組みだったのに対し、それ以降の「グヌーテラ」などの交換ソフトは、サーバーを仲介しないため、会社の責任を問うのが難しくなったことがある。
こうした流れの中でRIAAは、03年秋から、ファイルの提供を行っている個人に対する大量提訴を開始した。これまでに2400人以上の個人を提訴している。
(05/10 23:53)
http://www.asahi.com/national/update/0510/032.html
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