著者: 下園壮太

出版社:文芸社
ISBN:4835572033
サイズ:単行本 / 276p
発行年月: 2003年 12月
本体価格:1,500円 (税込:1,575円)

出版社からのコメント
担当編集者 今井鎮夫

 この本を企画出版するかどうか、という観点で本書になる前の生原稿を読んだのは、今年(2003年)の夏前のことでした。
“自殺防止の本”は類書がたくさん出版されていますので、市場性(読者)がある(いる)のだろうか、という疑念がまず頭にインプットされていました。
 ところが、読みはじめた途端“目からウロコ”などという言葉では言い尽くせない感動が湧きあがってまいりました。
 私も今春、親しい友人を自殺で失くしています。彼はどうして「死」を選んでしまったのかと想い続け、「死しかなかったのだろう。これ以上苦しむより良かったのかもしれない」と自分を納得させるようにしていました。この考えが、原稿を読み続けるうちに間違っていた、と気付かされたのです。
 そうなんだ! 人は「生きる」ために生まれてきたのだ。「死ぬため」では断じてない。この当たり前のことが、なぜ当たり前でなくなっているのだろう。この単純で素朴な「生きるために生まれてきた」ことを読者にしっかり提供できたら、「死」を考えている人そしてその周囲にいる人の多くに、救いと励ましを与えられるのではないか―つまり、この本を待ち望んでいる読者は数多くいる、と判断したわけです。
 著者は心理療法カウンセラーとして、長年にわたりたくさんのクライエント(相談者)と接し、彼(彼女)らの<苦しみ><絶望>の根源を分析してきました。
 その実践の中で見出したのが《感情のプログラムの誤作動》というシステムです。
 それは、人の内部には「生きる」ためのプログラム(DNA)しか組み込まれておらず、<不安>や<驚き>、<苦しみ>や<悲しみ>などの感情の発動に伴うさまざまな様相は「生きる」ために作用するもので、この自然摂理を現代人は<誤作動>を起こさせ、<絶望>から「死にたい」へねじ曲げてしまっているのだ、と具体的な例えを挙げ、平易な文章でていねいに説明しています。
「しにたい」と思わせるさまざまな様相は「生きろ!」というメッセージなのです。
 第一稿から、内容やタイトルなどの打ち合わせに半年の歳月をかけて、やっと読者のみなさまにお届けすることができました。
 一度でも「死」を考えた方(考えたことなどないという人のほうが珍らしいと思いますが)、親しい人がその状態でいらっしゃる方、ぜひお読み下さるようお願い致します。そして読後感などお送り下されば、著者ともどもこれ以上の喜びはございません。
 本書を、アイツに読ませたかった、としみじみ思っているところです。

著者からのコメント
死にたくなるのは変な事なのでしょうか。
つらい現実から逃げる事なのでしょうか。

自分の中に「死にたくなる気持ち」が生じたとき、人はまず驚き、次にそれに飲み込まれてしまうのではないか、という不安や恐怖に襲われます。
始めのうちは必死に打ち消すのですが、その思いがだんだん大きくなると、行動に移すことが良いことなのではないかと感じている自分がいる事にも気がつきます。
誰かに相談しようとしても、怒られたり、変な目でみられはしないかと不安でなかなか相談もできません。

私は、これまでたくさんのクライエントとお付き合いしてきました。
人が死にたいほど悩み、そしてそれを受け入れ、あるいは乗り越えていく姿に接するうち、私の中に「死にたい気持ち」に対する説明ができあがってきました。

「死にたい心」はどこからやってくるのでしょう。
死にたい気持ちは、実はあなたを守ろうとするプログラムが働いているだけなのです。
「守ろうとするプログラムが、どうして死にたくさせるのだ。」
疑問はごもっともです。
本書では、その不思議をご説明しました。
死にたい気持ちは、あなたを守ろうとする正常な“危機対処プログラム”が働き出したことを意味しています。正しいプログラムなのです。しかし、今は少しタイミングがずれているようです。それほど必要のない事態に対して、最終的なプログラムが発動している、つまり正しいプログラムが誤作動しているといえます。
誤作動であれば、それにうまく対処すれば良いのです。
死にたい気持ちの出所、正体が分かりさえすれば、恐れる必要はありません。冷静に対応すればいいのです。本書にはその具体的方法にも多くのページを割きました。

人間は不思議です。生命は私達が思っているより複雑で、したたかです。
その事を教えてくれたクライエントの皆さんに感謝します。
そしてこの本を、心の不思議に思いをめぐらすすべての人たちに贈りたいと思います。

・なぜ人は死にたくなるほど苦しむの
・うつ状態とはなにか
1.感情のプログラム
2.うつとは、驚き、怒り、不安、悲しみがいっせい発動した状態
3.感情のプログラムをいっせい発動させた精神疲労の蓄積
4.苦しみのプログラムの誤作動が対処を遅らせる
5.精神疲労を引き起こす病気や怪我もある
6.うつ状態のまとめ
・ 死にたくなる気持ち
1.あきらめと絶望のルート
2.さまざまな「死にたい」気持ち
・どのように誤作動を防止するか
1.苦しさが続いている人へ
2.死にたい気持ちが生じている人へ
3.愛する人の“死にたい気持ち”を察知したあなたに
4.回復期の乗り切り方
5.回復期を支えるあなたに
・必ず良くなる

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